へむのや堂書店

おへむの短編集でし。

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猿 酒 栽 培 キ ッ ト

「『あの』猿酒がご自宅のお庭で作れます」
 日曜日、なーんにもやることの無い中年課長は、新聞の広告欄に載っていた
通信販売の謳い文句に目をとめた。

「猿酒、懐かしいな。むかし美味しそうだなぁと思ってたんだよな」
 中年課長はこの商品を早速注文してみた。

 次の日曜日。中年課長宅に商品が届いた。内訳は木の実がなっている木が一
本と猿であった。
 猿は中年課長に会うなり言った。

「とりあえず作ってみるからよ。飲んでみな」
 猿は木を庭に植え、なっている実をひょいひょいとつまみながら、猿酒の仕
込みに入った。手際よい仕事ぶりを見て中年課長は
「これはきっと美味しいぞー!」とはしゃぎまくっていた。
 
 猿が仕込みを終え、数ヶ月が経過した後のとある日曜日。猿からOKの合図
が出た。中年課長は待ってましたとばかりに、グラスを持ってきた。
 これは仕込みの日以来、中年課長が毎日会社の帰りにグラスを売っている店
に寄り、悩んで悩んで選び抜いたお気に入りだ。
 そのグラスに猿から猿酒が注がれる。中年課長は恐る恐る一口飲んでみた。

「†★ʼn♭▽♪‡~」
 酒というにはほど遠い、植物の樹液が腐りかけた様な、物凄い違和感のある
のどごしの飲み物であった。

「どうよ?」
 猿は一服付けながらそう言った。中年課長はがっくり膝を落とした。
「すごく楽しみにしてたのに」
 涙ぐむ中年課長の肩を叩き、猿が言う。

「ちょっと考えりゃ判りそうなもんだろ? 『あの』チーズだって大人になっ
て食ってみりゃ大したことなかったろ? あまーいと思ってただろ? 『あ
の』肉だってきっとフツーの肉の味しかしねぇさ」

 猿が冷蔵庫の残り物で簡単なつまみを作り、テーブルに、普段から中年課長
が飲んでいる焼酎のペットボトルを用意する。

「さぁさ。こっちで飲み直そうぜ」
 中年課長は袖口で涙を拭きながら、猿の用意したテーブルに付き、猿と酌み
交わした。

「おまえもいい歳なんだからさぁ、童貞みたいな失敗すんなよな」
 と猿に笑われた。いままでの人生をしみじみと振り返りながら、焼酎をあお
る中年課長。猿にも焼酎を注ぎ、中年課長は自分の経験や失敗を楽しそうに語
った。
 猿も負けじとコップを空け、動物園や猿回しでのシノギの苦労話を語った。
いつのまにか夜は更けていく……。

 中年課長に充実した日曜日が訪れた。

 おしまい


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不漁

 おやびん:「みんな、今日の収穫を見せてくれ」

 こぶんA:「こんだけです」

 おやびん:「たったこれだけ! すくねぇなぁ」

 こぶんB:「収穫量も減ってやすが、最近は、きれいなのが殆ど無くて」

 こぶんC:「いっそ、養殖したらどうですかねー」

 おやびん:「俺たちが養殖しても、きれいなのはできねぇよ」

 こぶん達:「どうしたもんですかねぇ」

 沈黙の後、おやびんがぼそりと呟いた。



「……やっぱり神頼みしかねぇのかなぁ」


 今日も今日とて悪魔どもは、人間達の魂をこねくりまわしながら、ぼやき続けるのであった。

 おしまい
  

「ニュース」

男のキャスター:「六時のニュースをお伝え致します。本日は、平和な一日であり、特別ニュースは有りません。明日もこういった一日であって欲しいですね」

女のキャスター:「私からはひとつ。本日産婦人科に行ってまいりましたが、三ヶ月との事でした」

女のキャスターは、じっと男のキャスターを見つめて言った。

男のキャスターは女のキャスターから目をそらし、ゆっくりとカメラに向かった。

男のキャスター:「えー……。ニュースをお届け致しました……」




  

デリへむ♪

へむのや堂書店にデリバリーができやした。

略して「デリへむ」♪
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みてねー♪

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思いのほか

 とある田舎のしょぼいコンビニに強盗が入り、コンビニ店員と客数名を人質に立て籠もった。
 
 逃げ延びた客が警察に通報し、まもなく警察が周囲を包囲し始め、交通規制が敷かれた。

 警察の包囲が完了し、駐車場に対策本部が設営された。田舎の小さな街には報道陣が溢れている。

 警察の説得が開始された。と、すぐさま人質のうち客数名が解放された。解放された人質は、強盗から警察宛のメッセージを持たされていた。

 メッセージの内容は要求であった。要求をのまないときには、人質は全員殺害する旨が記述されていた。
 要求の内容は、このコンビニを今のしょぼいコンビニから、首都圏に展開している大手コンビニに店替えするようにというものであった。

 このしょぼいコンビニは、地場の小さなブランドで、チェーン店といっても県内十数カ所程度であり、置いてある商品もそこらの商店と変わりない程度の本当にしょぼいものであった。もちろんコンビニ決済など出来ない。コンビニといえるようなものではなかった。

 強盗は近所に住む無職の男であった。どうやら最寄りのコンビニがしょぼく、欲しいモノが手に入らず、便利でない事が不満となり、彼を凶行に走らせた様である。

 警察はこのばかばかしい要求を一蹴するつもりであったが、ご指名をうけた大手コンビニの本部は、さっそく現在のしょぼいコンビニの本部に打診し、検討の結果、人質の安全確保を第一と考え、強盗の要求をのむこととなった。

 しょぼいコンビニの代表と大手コンビニの代表が現場の駐車場に現れ、警察の厳重な警戒の元、強盗が見ている前で会社合併の調印書に捺印し、要求をのむという異例の結末となった。

 強盗はこれを見て、すぐさま人質を解放し、まもなく警官隊の前に現れた。まるごしであった。

 強盗はとりおさえられた。強盗の周りを警察が取り囲み、更にその外を報道陣が取り囲んで、もみくちゃにされながら護送車におしこめられ、警察へ護送されていった――

 ――強盗の要求をのんだ大手コンビニは、強盗の要求の通りに、しょぼいコンビニ本部を吸収合併し、チェーン店すべてを大手コンビニに店替えした。大手コンビニはこの事件により好感度をあげ、競合他社との差を広げていった。

 しょぼいコンビニは、吸収とはいえ大企業の傘下にはいり、収益を急激に伸ばしていった――

 数年の後、彼が出所してきた。

 彼は、事件を起こした、とある田舎の地に再び戻って来た。事件当時、報道特番が組まれ大量にメディアに露出した彼は、事件から数年経った今でも町の人が見間違う事が無かった。

 犯罪者である彼を見て、通りすがりの町の人達が皆、彼に会釈をして通り過ぎていった。

 彼の凶行により大手コンビニが進出した田舎の町は、彼が事件を起こす以前とはうってかわって活気づいていたのであった。

 勿論彼の住まいもそのままであった。最寄りのコンビニは元のしょぼいコンビニの本部が、大手コンビニの地域統括本部として併設され、アンテナショップとして最も商品が充実している店となった。

 住まいに荷物を降ろし、彼は満足げに最寄りのコンビニへと向かって行った。

 おわり 
  

くもすけ

「ただいま」
「おう、おかえり。今日はどこまで行った?」
「成田までひとっ飛びよ」
「いいねー。ほんじゃ今日は上がりか」

「しっかし、人間の世の中も便利になったよな。通信や交通手段も刻一刻と変わりやがる」
「近頃はEメールなんて便利なものがあるからねぇ」
「我々もお役ご免ですな」
「そのうち、人の世も変わるだろう。最後に物言うのは人の手しかないからよ」
「そんな時代がくるまで、気長に待ちますかね。へへっ」

 今日も伝書鳩たちは、少ない依頼をのんびりと待っておりました。

 おしまい
  

冷麺屋

 極寒の地ここアラスカに、日本から名うての冷麺屋の師弟が新たに屋台を出した。

「大将、客来ませんぜ。こんな寒いとこで冷麺なんざ食う人いますかね」
「あのな、暑けりゃ冷麺はだまってても売れるんだよ。こういう寒いとこで流行ってこそ本物ってわけよ」
 
 吹きすさぶ地吹雪の中、屋台に冷麺を求める人は来なかった。

「大将、客来ませんよ。もう止めましょう!」
「今日は天気がわりぃからな。だがな明日はきっと客が来る! 俺はあきらめねえぞ」

 結局、初日は誰もこの屋台に冷麺を食べに来ることなく、カンバンとなった。
 屋台を片付けながら、弟子がぼやく。

「もうやだよー、日本に帰りたいよー」
「弱音を吐くんじゃねぇ! と言いてぇところだが、こう寒いと正直しんどいな」

「おめぇも寒い中よくがんばったな。明日もこの調子でやってもらわねぇといけねぇからな。どれ、さっさと片付け終らせて、何か暖たかいものでも食いに行こうぜ」

 おしまい
  

中古屋

 プルルル プルルル と電話が鳴る。
 今日は問い合わせが多いこと。

「はい」「あのー。新着の広告を見たんですけど、まだ残ってますか?」
「はい。問い合わせは何件か入っておりますが、まだご案内できますよ」
「これってどうなんですか? 年代的にちょっと不安なんですけど」
「いえいえ、キズも無いし何よりワンオーナーですよ。この手のデザインは今時の物にはありませんから。お勧めです」
「前のオーナーのヘンなくせとか付いてないですかね?」
「前の方はそんなに乗られてないみたいで。逆に扱いやすいとおもいますよ」
「んー。よし、これいっとこう! 手続きお願い致します」
「ありがとうございます」

 この手の出物ばかりだと、商売やりやすいんだけどねぇ。ぐぇっへっへっ。

 プルルル プルルル おっと、まただよ。

「はい。×壱商会です」

 おしまい
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閃光

「今夜は嵐か……」

 初老の侍が、旅籠の窓から空を眺め、呟いた。

 夕刻になり、初老の侍は旅籠を発とうとしていた。旅籠の女将が初老の侍を見送りに出てきて言った。

「これから発たれるのですか。明朝にされた方がよろしいかと。街道は夜になると辻斬りが出るそうです。お気を付け下さい」

 初老の侍は目深に笠を被り、黙って旅籠を後にした。

 にぎやかな宿場を後に、街道に入る。日が暮れゆき、辺りは暗闇に閉ざされようとしている。

「月が持ってくれれば良いが……」

 街道が松林から森に変わってきた頃には、すっかり夜の帷が降りていた。足元はなんとか月明かりが照らしてくれている。

 森に入ってしばらくすると、そこにはただならぬ殺気が漂っていた。立ち止まり辺りをみまわす――と、草むらから一人の素浪人がゆっくりと現れた。

 素浪人は無言で、太刀に手をかけ、真っ直ぐ歩いてくる。あと一歩で間合いとなるところで、素浪人の歩が止まった。

 初老の侍は、笠をぐいと上げ、素浪人と向き合った。

「ほぉ、賞金首と出くわしたか。儂にも運が向いてきたようだ」

 素浪人は、初老の侍が、数年前に都を騒がした賞金首と気付いたようである。

 ――初老の侍は、かつて二刀流の使い手で、とある大店の用心棒であった。どんな状況下でも必ず相手を倒す、狂人的な強さを誇っていた。が、その大店が強盗に襲われ、皆殺しにあったとき、唯一生き延びた丁稚が「強盗は二刀流だった」という証言から、下手人扱いされ追われる身となっていた。夕刻に宿場を発つのも目立たぬ為であろうか――

「抜け。そして儂はお主を斬る」

 素浪人が挑発する。が、初老の侍は無言のままでいた。それを見て素浪人はほくそ笑み、ゆっくりと太刀を抜き、構えた。

「抜かぬのなら、こちらから参る!」

 素浪人は、柄に手もかけぬ、初老の侍に容赦なく斬りかかる! が初老の侍は、笠を使い、打ち下ろされる剣を次々とかわす!

 いつの間にか月は隠れ、気がつけば夕立の如く、雨が降り出していた。

 走り去る初老の侍を、素浪人が追いかけていく。森を疾り抜け、そして初老の侍を河原の崖に追い詰めた。

 ようやく初老の侍は柄に手をかける。が、抜かない。

「うわさの秘剣、二刀流居合抜きか。わしの野太刀どちらが強いかな」

 にじり寄る素浪人。その目を瞬きもせず凝視し続ける初老の侍。徐々に間合いがつまり、二人に極度の緊張感が漂う。

「ガアァーッツ!」

 素浪人が太刀を大上段に振り上げたその時、初老の侍が背後の崖から飛び降りた! 
 その瞬間、天から雷鳴が轟き、閃光が素浪人の太刀目がけて走った!
 素浪人は、まばゆい光に包まれ、直後に真っ黒焦げに姿を変えた――

「剣のみにあらず」

 そう言い残し、笠を拾い上げた初老の侍は、素浪人の亡骸を横目に森の小径へ消えていった。

 終わり
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選択肢

 もうどの位歩いたんだろう。昨日から、いやもっと長い時間だった気もするな……。
 まぁ、毎朝の通勤電車に比べれば、風も心地よいし悪くなかったかもな。

 私は河原に立っている。周りにも人は大勢いる。ここはどこだ? 何しにここへ来たんだろうか?
「ひさしぶりですね」
 鬼だ。鬼がダブルのスーツ姿で現れた。私を待っていたかのように。
「失礼ですが、どこかでお会いしましたでしょうか」
 自信を持って返答してやった。いちいち鬼ごときにビビッてたら、契約は取れん。
 特に曲者相手の場合、最初が肝心だからな。最初が。
「ええ。最近はご無沙汰でしたが」
 鬼が笑って言う。初対面だろうが? こいつコーチ屋か? そうか! ここは競艇場なのか……いや、違うだろう。どう見ても。

 周りの状況からだんだん分かってきた。どうやら私は死んだらしい。
 ふぅん。死んじゃったのか。まぁいいか。ローンの為にあくせく働いてきた日々ともお別れなんだろう。通勤電車とも上司の怒鳴り声とも。
「もうご存知かとも思いますが、一通りの説明をさせていただきます」
 対岸を指差し、鬼が説明を始めた。プレゼンか。
「あの川の向こうに向かってください。手段は自由です」
 見ると、空を飛んでいく奴もいれば泳いで渡っている奴もいる。船もたくさん繋留してあるな。好きに行っていいのか……。

 ふと周りを見ると、河原でボーっと座り込んでいる連中が多いことに気がついた。比較的若いやつらが多い気がする。
 どこにでもいるもんだな。今すべきことが目の前にあるのに、何もせずウダウダしている若者が。
「あの……」振り返りざまに鬼に声を掛けてみた。鬼は河原の整備をしていた。
 声を掛けると、鬼はスコップを置いて汗だくの額をスーツの袖で拭いながら「はい!」と飛んできた。
「いや、忙しいところ申し訳ありませんが、あの人たちは何々ですか?」
「あぁ、あの人たちはああやってずーっとあそこにいるんですよ。ずーっと。飽きないんですかねぇ?」

 そうか。ここにいればずっと何もしなくていいんだな。きっと。今時の若いやつらにはお似合いかもな……。
 うちの息子も仕事もせず、パチンコばかりだし。なんだかあの世も案外浮世じみているな。
 ……わたしもここにいれば、ずーっと楽できるんだな? 通勤電車も無い、数字や立場に押し迫られることもない。
 晴れ晴れとした気分ではないが、苦しみは無いな。腹も減らんし。
 ある意味現世が地獄で、いまの状況はそこからの生還だったかもな――。

 ひととおり連中を見回しいろいろと考えていると、先程の鬼が気になってきた。なんともアンバランスな光景が展開されている。
 人がブラブラしていて、鬼があくせく働いているわけだし。記憶にないが知り合いらしいし……。
「ところで、貴方はそんな立派な服装もされているのに、なんで河原の整備なんかされているのですか?」
 再び鬼に声を掛けてみた。さっきから見ている限り、この鬼、一人でここの管理をしているらしい。
 他にそれらしき者の姿が見えない。
「仕事ですから」と一言だけ言い残し、軽く会釈をするとスコップを地面に突き刺し新たに河原に辿り着いた連中の元に駆け寄り、かたっぱしから説明をくりかえしている。大変そうだな。
 営業と業務の掛け持ちか。しんどい仕事だ。
 にしても、これだけ広い河原をわざわざ整備する必要があるんだろうか? これ以上河川敷を広げても意味が無い気がするんだが。
 営業一本ではまともな給料がでないのかな。個人経営者ということも無いだろうし……。

 そんなこんなでしばらく鬼を観察していたが、この鬼、本当によく働く。一服もせずにひたすら仕事をこなしていく姿は輝いていた。
 こんな部下欲しかったな。部下じゃなくても、職場がこんなやつばかりだといいんだがな。
 彼の一生懸命な姿を見ていると、座り込んでいる連中が妙に腹立たしく感じてくる。
 大変だろうが、彼の仕事も定時があるだろうし、いつかは終わる。仕事のあとの一杯はさぞうまいだろう。
 そういえば、死ぬ前に『すし勝』に行きたかったな。給料日後の金曜日にすしつまむのだけが楽しみだったよな。
 そろそろ新子もはしりだろう。
 ……しばらく考えた後、私は川のほとりに立った。船の舫を解き、乗り込んだ。
 ここへ来て分かったが、次の世でやらなければならないことがあるみたいだしな。
「行かれるのですね。またいずれ」鬼が見送りにきた。深いお辞儀で私を送ってくれる。
「がんばってください」一言だけ残し、私はオールを手に西日が眩しい対岸へ向かい漕ぎ出した。

 やがて、日暮れとともにこの世界にチャイムが鳴りひびいた。
 鬼は大きな石にこしかけポケットから煙草を出し、一日の終わりにと一服つけた。
 深く吸い込むと、小さくなる船を見つめながらぶつぶつぼやき始める。
「はやいとこ河原を広げないと人が溢れちまう。あの人向こうでなんとかしてくれるといいんだけどなぁ」

 終わり
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「猫」というお題

「つおおーっ! 書けねぇー」

 一人の物書きが〆切を前に苦悩していた。彼は、とある所に投稿する小説を書かなければならなかった。ところが、案らしい案が何も浮かばないまま、〆切当日を迎えてしまったのだ。

「今回はお題が辛い。俺、犬とか猫とか代表的な生き物って飼ったことないんだよね。かわいいのはわかるけど。生き物は世話とか大変だし、逃げちゃったり探したり。えさ代もばかにならんし。散歩するために早起きするなんて考えられん」
「そんなエピソードがあれば、もう少し発想が浮かぶんだろうが……。でも、エピソード的になると有り触れてるかなぁ。やっぱり普通のお話に猫が登場するような物の方が良いのだろうか――」

 作業は一向に捗っていない様子である。

「こういうときには焦ったら負けだよ。うん。気分転換してヒラメキに賭けよう」
「まず、音楽だな。好きな曲聞けばテンション上がるだろう」

 しばらく聞くことのなかった、好きなCDを引っ張り出してきて、プレイヤーに入れてみた。

「あぁ、このフレーズ。いつ聞いても良いようん。良いねー」
 
 やがて最後の曲が終わると、CDプレイヤーがしゅるしゅるという音と共に停止した。

「うーん。良かった。やっぱり良いものは廃れないね。――って、音楽聴く為にCD掛けたんじゃなかった! 発想だよ発想!」

 どうしてもいい案が浮かばない彼は、次に物理的な気分転換を図ってみる。

「原稿用紙っていうのを使ってみようか。雰囲気はバリバリそれっぽいし」
 
 早速原稿用紙を買ってきた。ついでに万年筆も。彼お気に入りのブランドである。これらの買い物のレシートを改めて見て、彼はため息をついた。
 彼は早速原稿用紙を広げ、万年筆にインクをチャージし、なにやら取りとめもない文字を書きたくっては、破ってくしゃくしゃにして、ゴミ箱へ投げ込む。時間の経過とともにゴミ箱は絵に描いたようにてんこ盛りになっていった。

「これ楽しいなー、ストレス発散になるよ。くしゃくしゃーって。ああ楽し♪」
 
 しかし、この気分転換によって貴重な時間が浪費されていったことに彼は気づいた。そして途端に慌て出した。

「原稿用紙で完成しても、それをワープロ打ちに直さないといけないじゃないか! そんな時間もう無いよ」

 原稿用紙作戦はあえなく打ち切りとなった。残ったものはくしゃくしゃに丸めた原稿用紙の山・次回いつ使うものかも分からない万年筆・百貨店の高額なレシート。結局小説は全く捗ってはいない。気分転換に半日費やした挙句、PCの前に座る。それは今朝と全く同じ状況であった。

「原稿用紙のソフト無いかな? デリートではなくて原稿用紙をくしゃくしゃにするっていう機能がついてるのが欲しいな」
 
 彼は、検索エンジンに「原稿用紙 ソフト くしゃくしゃ」と入力し、調べ始めた。3つ4つサイトを閲覧したあと、またも我に帰る。

「だからこんなことしてる暇は無いって! どうしても逃避しちゃうなー」

 集中力が続かない様子である。そして気分転換がことごとく裏目に出る状況下に置かれた彼は、徐々におかしくなり始めた。

「まずいー! まずいよー! どうしよう? どっかに逃げようか。どこに逃げよう? 健康ランドでも行くか――風呂入ってどうする!――これは、終わってからのお楽しみにしましょう」

 そうこうしている間に、残された時間はもう限界を過ぎていた――彼の中でカウントダウンが始まった。

「まぁ待て待て待て待て。ジタバタしても始まらんっ。まずは一服」
 タバコに火をつけ、缶コーヒーを一口。どうやら彼なりの最も効果的な気分転換のようである。これにより彼はすこし冷静になってきた。

「散乱した情報を集約しよう」

 彼は断片的に浮かんだネタを箇条書きにしてまとめ始めた。ようやくまともに取り掛かる姿勢になったようである。

《ネタ》
 ・猫の派遣社員
 ・殺人現場の目撃者が猫
 ・猫がいっぱい居る島
 ・街の猫会議の中継
 ・次のヒーローものの主人公が猫 etc

「うーん、使えん。どうしたものか……。これらを繋げて話をでっちあげてみるか」

《あらすじ》
「猫だらけのとある島で、連続殺人が起きる。目撃者はおらず、現場には必ず猫がいた。警察の科学捜査班が島の猫たちを分析してみると、驚くべき結果が!」
「別動隊が、島の猫たちが集う港に潜入し、猫会議の終始を収録したところ、驚くべき内容が!」

 そして

「実は、殺人事件の犯人は猫たちだった! しかし、その裏には驚くべき事実が!」

 さらに

「連続殺人の被害者たちは、実はとある麻薬組織の連中で、この島で麻薬精製を行っていた。それを闇の警察が阻止するため、猫たちを派遣社員として雇い、麻薬組織と戦っていたのであった!」

 だんだん盛り上がってきたよ。

「闇の警察が麻薬組織を追い詰めた! そこで闇の警察が見たものは――麻薬組織の親玉は実はバケモノであった! バケモノの前に手馴れの猫たちが次々と倒されていった。そして、最後に残った一匹の茶トラ。意を決した茶トラが変身する! じゃーん!」

 クライマックス

「最後の戦い。巨大化したバケモノと変身した茶トラのヒーローが街や港を破壊しながら大暴れし、みごと茶トラが勝利を収める」

 これでいこう!

 カウントダウンが続く中、彼は今までの愚考を悔い改めるように無心に書き続けた。そして最後の一文を締めくくり、茶トラの勝利とともに彼の戦いも終焉を迎えた。

「ふぅ、終わった。やればできるもんだね。なにごともあきらめてはいかんよ」

 書きあがったばかりの文章をメール送信し、彼の長かった苦悩の日々は終わった。

「そういえば、これにかかりっきりでメールぜんぜんチェックしてないや。整理しないと。うわ、受信トレイ248って何? うえー、ほとんどゴミだよー。んー、幸子って誰あんた? すみませんって俺に何したのさ? yuka……待ってますって何を。原稿なら送ったよ!」

 彼は次々とメールを削除していく。そして大量のスパムメールの中に見慣れた差出人の名前を見つけた。

「おお、やっと普通のメールがあったよ。なんだろね?」

『次のお題は“犬”でお願い致します』

 おしまい
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「暑くなってきたな。そろそろ地上に出る頃かな?」

 蝉の一生は、その殆どを地中で暮らし、わずかな間だけ地上で成虫として過ごし、子孫を残したあと一生を終える。

 私も今年で七歳。いよいよ地上に出る年になった。
 近年、木の根が枯れてしまい、地中でその命を終える仲間たちも多いのだが、私は辛うじて変な味のするやわらかい種のようなものから水分を吸い取り、いままで生きてこれたのだ。

「地上に出てもロクなことなさそうだなぁ」

 去年、一昨年共に先輩たちが地上に出て行った。本来であれば子孫たちが地中に帰ってくるはずだが、それがない。木の根が無いことからも地上の荒廃ぶりが目に浮かぶ。

 とはいえ、たかが蝉一匹の分際で、自然の摂理には逆らえないわけであり意を決して地上に出てみた。

 月は出ていない。妙な暑苦しさが感じられたが夏だし仕方ないだろう。
 周りに木が無い。ここは都心の公園だったはずだが。しかしこれは計算の範疇だった。
 辺りを見ると手頃な瓦礫があったのでこれにつかまり羽化した。羽が乾くころには朝になっているだろう。

「これは」

 やがて明け方になり、視界もだいぶ遠くまで及ぶようになってきた。そして……。

 私の目に映る光景は、七年間想像していた地上のそれとは全く異なるものだった。
 緑のないコンクリートの世界が広がっているんだろうな、とは思っていたが。

 不気味な色をたたえる空、草一本生えていない延々と続く瓦礫の山。
 生物らしきものたち、いやそれ以前に人間すら見つけることができない。

「人間は滅亡したのか? 他の生き物も――」

 動揺は押さえ切れなかったが、取りあえず飛んでみようと思った。羽の調子もみてみたいし。

 思い切り羽ばたいて宙に舞う。処女飛行は上々だ、とりあえず飛べる。しかし今度はつかまる場所がない。

「さっきの瓦礫くらいか」

 辺りを見回しても私が羽化した瓦礫以外にはつかまることができそうな場所がない。困ったことに。

 仕方なくそこへつかまるべく近づくと、とんでもないものが目にはいってきた。
 私の抜け殻に無数の人間が群がっているのだ!

 しかし、本当に驚いたのは人間がいたことではなく、その大きさだった!

 人間が小型化しているのだ! 私の爪くらいしかない! なぜ!

 恐る恐る抜け殻に近づくと、人間たちは一斉に石つぶてを放ってきた。
 たまらず飛び立つと羽ばたきの風圧で殆どの人間たちはぺしゃんこになってしまった。
 助かった数人は小石の隙間に消えていった。
 辺りに飛び散った人間たちの死体からは、どこかで嗅いだ様なにおいがした。

 私が地中ですすっていたやわらかい種のようなものは人間の死体だったのか――

 七年間、いやこの二、三年で生態系がこれほどまで変わってしまうものだろうか? という疑問が湧く。
 私のような蝉ごときが人間に勝る世界なんて。

 考えているうちにだんだん気持ちが高ぶって来るのが分かる。もはや人間は虫ケラ同然であり食料でしかない。
 私は地上を支配する万物の長だとも思えてきた。

 そうとなったら何をしようか? 人間狩りしようか? メスでも探しにいこうか? 
 まぁ、なんでも好き勝手にできるわけだし慌てることはない。先ずはもう一度飛び立ち、じっくり地上を見てやろう。この私の大地を!

 さっきより高く飛び立ってみた。そこには先程見たのと同じ単調な景色が広がっているだけだが、私だけの物と思うと不思議と悪くは見えないものだ。うん。

 いい気分で空の散歩をしていると、ふいに辺りが真っ暗になった。いきなり夜が? 太陽は沈んだのか? 上空に顔を向けてみる。

 その瞬間、私は何者かに捕らえられた。先程よりも高く飛んだ私は、カラスの目に留まってしまったのだ。
 カラスは私より遙かに大きかった。その巨体は空をも覆う程であった。

 人間が小型化したのではなく、生き物たちが巨大化していたのだ。

 終わり
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勝利への脱落

 目覚めると世の中は暗闇に包まれていた。

 どうやらスタートから一日は経過したようだ。

 とある国のたいそうな金持ちの道楽で、「人は真っ暗闇でどのくらい耐えられるか」という企画が起こり、これが大会となった。参加者は真っ暗な個室に閉じ込められ、外界との交渉は一切できない。食事や入浴、手洗いなどは各部屋に常設されているものの、使用するにも真っ暗。

 また、娯楽等は一切無く時間の概念もない。ただただ、真っ暗な個室に居なくてはならない。ルールは簡単で、耐えられなくなった場合は部屋から出ればよい。それで失格だ。参加人数も伏せられている。ライバルたちが何人残っているとか、どんな状況下に置かれているかなど全く不明だ。

 そして、最後の一人になった者には莫大な賞金が与えられる。俺も賞金に目がくらみ、この大会に参加した――

 先ずは部屋の配置でも確認するとしようか。腹も減ったし。この部屋のどこかに食べ物があるはずだ。
 手探りで床をつたい、壁から壁までの距離を測る。どうやら10畳間くらいの空間のようだ。ひととおり探ると、部屋の見取り図が頭の中で完成した。

 脱出の扉の左隣にシャワー。入浴や水が必要な場合はこれを使えということか。右隣には手洗い。仕切りも何もない。囚人みたいだな。もっとも真っ暗だし一人だから必要は無いが。扉と反対のカベには窪みがあり、ここから食事が提供されるらしい。パンらしき物が見つかった。とりあえず飯にすることにした。真っ暗な中でパンをかじり、パック入りのスープをストローですする。

 気がついたことは、暗闇では飲み物が口に入る瞬間まで、なんだか判らないということだ。甘いのか、しょっぱいのか、判らずに飲み物を口にすることが、これほど恐ろしいことだとは思わなかった。

 恐る恐る食事を終え、一心地ついた。シャワーでも浴びることにしようか。頭からシャワーをかけ、冷静に考えてみた。

 結局暗闇の中では何もすることができない。生きるために食ったり出したり寝たりはできる状況ではあるが、それ以外のことは何もできない。ただ生きているだけだ。
 
 ――恐らくは、すでにかなりの脱落者が出ているだろう。この状況はかなり苦痛だ。何も見えないし、人の話し声も騒音も何も聞こえない。自分の発する音が聞こえるだけだ。これでは殆どの人がすぐに耐えられなくなるだろう。視覚や聴覚は全く意味を為さないのだ。

 俺はもともと働くのが嫌いだから、苦痛なもののなんとか耐えられる。室温も快適だし食うものもある。とりあえずひたすら寝ることにした。
 しかし、疲れてもいない体がそうそう寝てばかりもいられないらしく、すぐに目が覚めてしまう。あぁ、退屈だ。この大会は実は暗闇我慢大会ではなく、退屈我慢大会なのでは? と疑ってしまう。

 ただ賞金は魅力的だ。どう計算しても一生使い切れない程の大金だ。脱落者も多かろうが、残っているやつもかなりの人数だろう。これは長期戦になるな――

 何日経ったのだろう。もう忘れた。当初は睡眠時間をだいたい何時間と計算して、四日くらいまでは記憶していたのだが、不規則な睡眠時間により、これは当てにならなくなってしまった。

 結局、脳が疲れるまでひたすら妄想することになってしまった。いろんなことを妄想した。友達や家族、趣味から世界情勢まで。これに疲れると、オナニーして寝る。
 ひとつ判ったことは、人間にとって、妄想とオナニーは生きている限りどんな環境でも可能な道楽だということだ。現代のエロ産業なども、これに帰するんだろうなぁと思った。大会が終わったらブログにでも体験談をUPしようか――

 だいぶ日にちが経過したはずだ。恐らくは一ヶ月は経っているであろう。顔を触るとヒゲの伸び具合で判る。

 暗闇での生活には、触覚が最も大切なことが判った。なんでも手探りだからだ。だいぶ手先が器用に、敏感になったことが判る。オナニーのテクニックも大分上達した。

 そしてこの環境下で、俺はひとつの道楽を見つけることができた。

 少し前から俺は、トイレットペーパーの芯でオブジェを作りはじめた。作っているのはもちろんダッチワイフだ。たまに出るおにぎりを残して、ご飯粒で糊をつくり、水に浸したトイレットペーパーの芯を貼り付けていく。爪もだいぶのびた。細かい加工にはこれが役に立つ。

 最初は物理的な機能だけを求めていたが、手先が器用になり、手や足を作ってみた。おそらくはちゃんとできているであろう――

 やがて、数ヶ月は経過したであろう。下を向くとヒゲはのど元をくすぐる。

 ダッチワイフはもうすぐ完成だ。顔も作った。俺の好み通りに作られた理想の女が出来上がっていく。中には布団の綿を千切って入れた。ふかふかとして抱きごこちはなかなかだ。

 こうなると、暗闇が格好の住処になってしまった。好みの女を作り上げることのみに没頭できるこの暗闇が――

 そしてもうすぐ一年も見えてきた気がする。ここへ来ておれはひとつの選択を迫られていた。

 ――彼女に髪を生やしたい。

 いく晩も肌を共にするうちに、彼女のことが本当にいとおしくなってしまった。すてきなロングヘアーを生やしたい。
 ここまで来て大会を断念するか……。しかしここまで来れたのは他ならぬ彼女のお陰だ。大会の結果より、彼女を完璧な女性にしてあげたい――

 俺は初日に一度触ったきりのドアノブに手をかけた。そしてドアノブをひねり、彼女と共に扉の外に出た――

 ――そこには、薄暗くされた広い部屋があった。ほんのわずかな明かりがある部屋が。それでも目には眩しかった。暗闇で生活していた者への配慮か。
 そしてゆっくり人が近づいてくる。手にはマイクを持っているらしい。TV局のリポーターか。そして、興奮した口調でしゃべり始めた。

「なんと、最後の三人の方が同時に終了されました!」

 俺の他にもまだ二人続けているやつがいたのか……。でもそれはもういい。早く彼女に髪を。

「三人の方皆さんで優勝を分け合うことになりそうです! 先ずは今の感想を聞いてみましょう!」

 別の部屋で戦っていた二人が薄暗い部屋に連れてこられた。遠くてよく見えないが、何か大きな物を持っているみたいだ。

「中での生活はさぞ大変だったでしょう。今一番何をしたいですか? 何か欲しい物は?」TV局のリポーターが訊ねてきた。俺は迷わず「金髪のロングヘアーのカツラ」と答えた。そして、次のやつにも同じ質問をすると、そいつは「真っ赤なハイヒール」と答えた。最後のやつは「シルクのストッキングが欲しい」と。

 俺たち三人は皆、暗闇で理想の彼女を手に入れたみたいだ。

 終わり
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伝説の真実

「岩場だ……」
 
 それらしき影を遠くに見つけた私は、遠のく意識を奮い起こし、無我夢中で水を蹴った。そして夕暮れ前になんとか岩場に辿り着いた。岩場に這い上がり、しびれた手足を伸ばし深々と息をついた。

 数時間前、私の乗っていた船が突然沈没した。甲板にいた私は他の乗客と共に海に投げ出された。私は運良くすぐ近くに浮いていた板きれにつかまることができた。周りの乗客は皆、沈没に巻き込まれ深い海中に沈んでいった――数時間の漂流で岩場を見つけられたのは運が良かった。

 なぜ大洋のど真ん中であんな大きな船が突然沈没したのだろうか? 座礁するような海域では無いし、他の船とも衝突していない。爆発音なども聞こえなかった。なのに突然沈没してしまった。海の魔物にでも襲われたとしか思えない。

 沈没した場所と、漂流していた時間から、ここは陸地の近くではない。ここはただの岩場なんだろう。

 岩場は平たく、上には打ち上げられた魚や、海藻があった。僅かながらも食料があることを確認し、一心地ついた私は落ち着いて周りを見渡した。が、海と空しか見えない。

 やがて沈む夕日の方向に何か動く物が見えた。海面をゆっくり動いている。かなり大きい魚かクジラか。

 すると、その動く物がこちらに近づいてくる。なんなんだ――

 岩場から十メートルくらいのところで、そいつは姿を現した。人魚だ! 伝説の人魚だ! 海面から上半身を出した人魚の姿は、よく見る架空の姿そのものだった。

「あら、オトコがいるわ」
 人魚が話した! あちこちにある人魚伝説は実話だったのだ!

「こんなところでなにをしているの?」
 動揺している私に人魚が話かけてきた。気を落ち着かせてから、私は沈没から漂流の経緯を簡単に説明した。

「そうだったの。ワタシの住処に行きましょう。アナタのお友達もそこに居るわ」
 みんなが生きているのか! あの状況で助かったのか!  

 人魚は、海底に神殿があり、そこに私の仲間が居ると言う。しかし、海の中に人が居るというのはおかしい、と思った矢先、人魚は自分の鱗を一枚はぎ取り、私に手渡した。

「それを咥えていると、海の中でも息ができるのよ」

 言われるがまま、もらった人魚の鱗を口に咥え海に入ってみると、なんと、水中で呼吸ができるではないか! それどころか海水が目にしみない。人魚には不思議な力があるのか! 驚いている私の手を掴み、人魚は真っ暗な海中へ私をいざなっていった。少し潜ったところに神殿のような物があり、人魚は私を真っ直ぐそこへ導いていった。どうやらみんなも同じように連れてこられたんだな。

 神殿の中は明るく、私の気持ちを和ませた。数時間前の絶望感から解放されていくのがわかった。やがて神殿の奥に辿り着くと、そこには人がたくさんいた。

 が、少し様子がおかしい。人に近づいてみると疑問は驚きに変わった。

 皆死んでいる!

 誰も人魚の鱗を口に咥えていない。よく見ると片目を失っている者、はらわたがはみ出している者、生きている訳がない。表情も無く、ただふらふらと立っているだけだ。

「ワタシが口づけすると、死んだ人間が甦るのよ」

 こいつらは生きてなんかいない、ゾンビになっているだけだ! ここにいるやつら皆ゾンビだ! みんなこの人魚にゾンビにされたんだ!

「ここにいるのは、みんな海で死んだオトコ達。海のオトコはみんなワタシのもの」

 ……私の乗っていた船もこの人魚に沈没させられたのだろうか? 恐る恐る人魚に聞いてみた。

「クラーケンにお願いしたの。オンナはみんなあげるから、オトコはワタシに頂戴って」

「ワタシ人間のオトコがスキなの。だからクラーケンに船を沈めてもらって、死んだオトコを甦らせるの」
「アナタはキレイ。どこもこわれていない。イチバンスキ」
 人魚は満面の笑みで、私を見つめている。私もコレクションの一つにしようとしているのだ……

 私は耐え難い恐怖に襲われ、神殿から逃げ出した。真っ直ぐ海面を目指し、海面へ出ると岩場を探した。

 岩場まではそう遠くはなかった。岩場の位置を確認し泳ぎ出した、が、さっきまでとは異なり海水が噎せるではないか!

 人魚の鱗は恐らく一回しか使えないのだ! 咥えていた人魚の鱗を吐き出し、もがきながら必死に泳ぎ、なんとか岩場までたどりついた。岩場の上で呑み込んだ海水を吐き出し切ると、深呼吸した。呼吸が整い冷静になってきたその時、私が置かれている状況に絶望した。

 岩場が縮んでいる! さっきまでは漁船くらいの大きさだったのに、いまは人ひとり立てるくらいしかない! この岩場は満潮になると水没してしまうのだ! 今日は満月だ――

 やがて、海面が膝を覆い、立っているのが難しくなり始めた頃、人魚がそばまでやってきて、私が溺れるのを待ちわびていた。

 終わり
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暗黒大魔王の闘い

「ここで臨時ニュースです。先程東海地方全域に及んだ地震の震源は富士山です。震度は3、マグニチュードは4.2となっております」

 ――青木ヶ原樹海。その奥深くにある洞窟にて人類史上最大の敵が今、蘇る――

「ふははは。3千年の眠りより今、よみがえったぞー。我が名は暗黒大魔王也。さぁ、人間共をやっつけに行こうではないか」
「先ずは、儂のしもべたちを復活させねば。たしかこの辺に一緒に埋まってたはずなんだけど……」

 洞窟から出た暗黒大魔王は、3千年の月日の流れに愕然とする。

「あれ? 森になっちゃってる。3千年前は荒地だったのに」
 しもべたちを埋めたと思われる辺りは大木が生い茂り、その行方は捜索困難な模様である。

 暗黒大魔王は取り敢えずしもべたちの復活は後回しすることにした。
「地上をすべて焼き払えばすぐに見つかるだろう。それより人間共を一人残らずやっつけなければ」
 
 とりあえず人間を探し始めた暗黒大魔王。しばらくして、人間が作ったとおもわれるトンネルを発見した。

「この中に隠れているのだろう、フフフッ。中に居るヤツラを一人残らずやっつけてくれるわ」
 意気揚揚と洞穴に入っていく暗黒大魔王……

「プアーンンッ!」

「うわぁー!」っと慌ててトンネルから暗黒大魔王が飛び出してきた。その直後に新幹線がトンネルを通過し、次のトンネルに消えていった。

「白い龍か。しかもあれに人間が乗ってたな。人間共は龍をてなづけたのか? だとしたらやっかいだな。苦手なんだよなー、龍は」

 ぶつぶつ言いながら、暗黒大魔王は線路の上を歩いていった。やがて幾つかのトンネルを通過した後、遠くに工事現場を見つける。

「おおっ、人間共がおるわ。うーむ、麒麟までもてなづけたようだな。早めにあそこにいるヤツラはやっつけたほうがいいな」

 工事現場にはたくさんの重機と作業員たちが仕事に精を出している。そこに現れた暗黒大魔王が大声で名乗りをあげた。

「我が名は暗黒大魔王也。人間共よ――」

「こんなとこウロウロすんじゃねぇ、轢かれてぇのか!」と、ユンボの運転手が叫ぶ。

「なにをこしゃくな! 目にもの見せてくれるわ!」暗黒大魔王が火炎の呪文を唱える。指先にはポッと炎が灯る。それを見たユンボの運転手がまた大声で怒鳴った。
「溶接屋は西の作業場だろうが! さっさとやってくんねぇと、こっちは何にもできねぇんだよ。早ぇとこやっつけてくれよ」

「なに!?やっつけてほしいだと。ほほう、人間共にも強敵がいるようだな。どれ、そやつをやっつけておまえたちをひれ伏させるとしようか」

「おう、あのユニックが今、西に行くとこだ。乗ってけよ」
 ユンボの運転手が、すぐそばを通りがかったユニックを止め、荷台に暗黒大魔王を乗せていくように交渉した。

 荷台に乗り、西の作業場へと向かう暗黒大魔王。

「どんな強敵だろうが、儂の火炎で灰にしてくれるわ! ふっふっふっ」
 悪路に揺られながら、強敵との対面に心踊っているようである。

「なんだいアレ? 独りでぶつぶつ言ってるよ気味わりぃ。それとあの格好」
 と助手席の作業員が、ユニックの運転手に話し掛けた。
「コスプレってやつじゃねーか? 今時の若者のファッションだろ?」

 程なく西の作業場に到着した。ユニックを降りた暗黒大魔王は溶接の作業場に案内された。

「強敵はどこだ……」と辺りを見回す暗黒大魔王を呼び止める声が。

「遅いよ。みんなとっくに作業始めてっからよ。さっさとやってくれよな」現場監督は鋼材の溶接を指示した。

「闘技場を作っているのか。ということは強敵とは決闘形式で戦うのだな。どれ、さっさとこさえて決闘をはじめようではないか!」

 鋼材の溶接をはじめた暗黒大魔王は、サッカー場の完成予定図をみてほくそえむのであった。

 終わり
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妙案

 村の青年団員たちは村おこしの会合を終え、おのおの家路についた。
 彼らのいる村は山間部に位置し、若者が少なくこれといった産業も無い為にその存続が危ぶまれている。
 彼らの隣村は、なんでも泉から酒が湧きだしたとかで一躍観光スポットとなったが、彼らの村はその往来客へ僅かに採れた山菜などをおみやげものとして売るに留まっていた。

「うちも観光で一発当てたいなぁ」
 青年団長がぼやく。――隣村がうらやましい。泉から酒が湧くなんてほんとに運がいいよ。行列に並ぶのが嫌な観光客用に、泉から湧き出した酒を振舞う居酒屋まで出来て、これが大当たりだと聞くし。それに引き換え……
 青年団長には隣村の連日の大賑わいが良く分かっていた。近隣の町から隣村へ車で行くには手段が限られている。村と隣村を繋ぐ一本の県道。ここを通らないと隣村には辿り着けないのだ。

 ――ここを通る観光客をなんとかうちにも立ち寄らせないと。さてどうしようか。あぁ、なんか村のセールスポイントは無いかなぁ……
 家への帰り道をとぼとぼ歩きながら青年団長は考えていた。手っ取り早いのは観光なのだが、客引きの題材がなかなか浮かばない。
 そうしている間にも隣村へと向かう車が何台も青年団長の目の前を通過していく。

 ほどなくして村の中心部から県道へと交わる三つ辻にでた。ここには古くからある祠がぽつんと建っている。
「この際神頼みでもしてみるか」
  苦しいときの神頼みよろしく、青年団長は祠にお参りしてみようと立ち止まった。
 ――子供のころはよくここにきてはお願いごとをしてたっけ。そういえば成人してからはお参りしてないな。
 どれ、ここは奮発してお神酒なぞお供えしてみようか。青年団長は家に帰って飲もうと思っていたカップ酒をお供えし、祠に向かって手を合わせた。
「何でもいいから村に産業をお願いします」
 青年団長が願い事を唱えると、ふいに後ろから声がした。
「何でもいいって、いいかげんじゃな」
 振り向いた青年団長の背後には、村では見かけぬ老人が立っていた。

「だれ?」
「だれって、ここの神様じゃよ。おまえがめずらしく来たんでな、出てきてやったのじゃよ」
 面倒くさそうに神様が語る。
「へぇ、祠の神様か。じゃあ早速村に産業を」
 青年団長の話をせき止め、神様が言葉を返す。

「おまえ変わらんな、いっつも自分の都合ばっかりじゃ。人に物を頼んでいる姿勢じゃないぞよ」
 ため息をついたあと、神様は続けた。
「カップ酒一個なんて、おまえの願い事にしてはちゃっちくないか? 大体むかーしから食いかけの饅頭とか、おまえわしのことなめてんじゃない?」
「だって、ご利益ないじゃん」
 青年団長のこのセリフに対して、神様は激怒した。

「おまえの願い事はすべて叶っているだろう! ガキの頃から無茶ばっかするくせに怪我ひとつしないし、おまえの親父だって元気に長生きしとろうが!」
 ――ふぅん。言われてみればそうだな。今までは大怪我もせずに無事やってこれた。思えば小さかった頃は、家族と自分の健康のことしかお願いしてなかったかも。うーむ、ひょっとして力のある神様かも。
 ニヤニヤしながら回想にふけってなかなか謝らない青年団長に、神様はキレてしまった。

「もう知らん、帰る! 出てきてやって損した」
 消えかける神様を止めるべく、青年団長は慌てて声をかけた。
「申し訳ありませんでした。謝ります。これでも村を何とかしようと必死なんですよ。村の守り神なら何とかしてくださいよ。隣村なんか泉から酒が湧いて大フィーバーですよ。うちにもなんか出してくださいよ」
 哀願する青年団長に対して神様が仕方なさげに答える。
「あれはな、隣村の商工会の会長がわざわざ中国まで行って酒仙をコンサルタントに雇ったのじゃよ」
 神様曰く隣村の泉の件は、同じような悩みを抱えている隣村の商工会の会長が、打開策として世界中回って片っ端から神頼みした結果だという。隣村の商工会の会長はいけすかないおやじだが、なかなかのやり手だ。威張っているだけのことはしているんだな、と青年団長は思った。

「おまえもそんくらいすれ」
 神様はそう言うと、再び消えようとしていた。――ここで神様に見捨てられたらほんとにお終いだ。何とかここで神様を引き止めないと。
 
「あっ!」
 考えるまもなく青年団長はすぐに思いついたことがあった。
「そういえばさ」
「何じゃよ、もう知らんよ」
「祠の世話をする人って、むかーしから村一番の巨乳娘って言い伝えられているけど、それって」
 神様がとどまった。
「い、いやあのな、それは」
 神様の顔色が変わった。動揺する神様にたたみかけるように青年団長は続けた。
「何にも必要性ってないんじゃない? 単なる趣味?」
 厳しい質問だった。が、神様が人間に対して黙秘するわけには行かず、已む無く自白する。

「だって、そりゃーおめぇ、どうせなら若くてオッパイのでかい娘に世話してもらったほうがいいじゃんよ?」
 神様だけに都合のいい嘘はつけなかった。この一言を機に形勢が逆転してしまう。
「本人から直接聞いたもんねー。へへ。言いふらす」
「引き受けさせていただきます」
 冷徹な青年団長の一言に神様は即応した。歯を食いしばりながら、神様は青年団長に向かって悔しそうに頭を下げた。

「で、どうするの?」
 青年団長は早速本題に取り掛かろうとする。諦め顔の神様は青年団長に向かって説明を始めた。
「村一番の観光スポットに行ってみれ。そこに用意しておくよ」
「それとな、これを機に隣村とは仲良くしろよ。元々はひとつの村じゃったのじゃから」
 ――へぇ、それは知らなかった。昔からいがみ合っていたものだとばかり思っていたが、元は同じ村だったんだ。

「企画としては、隣村とのコラボになるからの。持ちつ持たれつというやつじゃ。向こうで宣伝してもらわないとこの辺りを一大観光地にはできん。後で商工会の会長にあいさつしに行け」
「でも、あのおやじは気にいらねぇ」
 息巻く青年団長を諭すように神様は続けた。
「立場をかんがえてみい、おまえにしてみれば村おこしの先輩じゃ。お前から伺って話を持ちかけるんじゃ。向こうもこの企画には乗ってくるよ。うまくいけばこの辺りを観光地にできるからな。あとはおまえの営業力にかかっておるぞよ」
 そういい残すと、口を尖らせたまま神様は消えていった。

「どこかな? 村一番って言っても何もないじゃないか」
 祠を後に、青年は県道を歩き出した。隣村へと向かうその道沿いには川が流れている。
 ――景観なら、やっぱりこの川沿いか?でもこれじゃ人は呼べないよ。大体隣村との共同事業ってなにさ?
 酒を分けてもらって、こっちにも居酒屋を建てるのか? いや、あのおやじはそんなお人好じゃない。
 
 青年団長の中に神様に対する疑問が浮かび始めてきた頃、気づくと辺りが次第にモヤけてきた。ほのかな香りを携えて。
 ――温泉でも湧かしたのかな? 飲んだ後にひとっ風呂浴びるのか? それなら下流のホテル街とかぶっちゃうよ。だめじゃん。
 ガードレールから身を乗り出して川の方を見回す。そして何かを見つけた青年団長がくすりと笑った。
「ほんっとに俗物的な神様だな」

 川の行く手にある滝の水がすべてラーメンになっていたのであった。

 終わり
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こわれもの

「あなたねえ。『昨日の晩ごはんはやきいもを食べた。おいしかった』、って。だめでしょうこんなの! ちゃんと作文にしなさい。大体夕食にやきいもなんて。ほんとにもう」
 投げ返された作文用紙を掴んだ途端、俺の胸はこいつに対する殺意でいっぱいになった。

 思えばあの時から、俺のカオスが始まった訳だな。
 うちの母親が遅くまで働いていることぐらい分かるだろうによ。お前にだって子供はいるだろう?
満足な飯を作れないことだってあるよな? あれは冷たすぎるぜ。

 ふと、昔を思い出しちまった。
 あの担任を刺して少年院いって、出て早々にこれだ。まぁこんな風にしたのは奴だがな。あいつのせいだ、すべて・・・・・・。

 突然、警察が用意した携帯電話が鳴りだした。俺は現実に返ることにした。
「あぁ、何だ! 用意できたんかコラァ」 
「要求の身代金は用意した。逃走用の車も用意した。人質を開放しろ!」
「うるせぇーっ! こっから出るのが先だ。とっとと車を玄関に付けろ」
 窓ガラスに銃を向け乱射した。破片が飛び散り、人質たちが恐怖に叫ぶ――いい気分だ。

 こいつらきれいなカッコして家族そろってお買い物かよ。いいねぇ。
 てめえらみてぇな幸せそうにしている奴等はとりあえずみんな俺がブッつぶしてやる!

 玄関先に白いセダンが停まった。刑事らしき奴が降りてきた。
「金はこの中だ。後ろに置くぞー」
 後部座席にトランクを投げ込み、下がっていった。

 ここも退屈してきたしな、とっとと出るとしようか。
 セーラー服を着た小柄な少女が目に留まった。こいつを逃走用の人質に使うか。
「おまえはついてこい! 最後の人質だ」
 さっきから俺の周りをチョロチョロしていたのが運のつきだったね。おまえ目立っちまったんだよ。

 強引にそいつの腕を引っ張り、左腕を首に回し、持っているナイフを首に突き立てる。
 恐怖に怯え、俺を見つめるその目は俺のカオスを強烈に燃え上がらせる。フフフッ。

 自動ドアをくぐり、警官隊が取り囲む中、外にでた。いい天気だ。日曜の昼ってのはのんきでいいねぇ。この辺以外は。
 
 白いセダンに少女を押し込めると、すぐさま俺も乗り込んだ。まるで映画みたいだな。ワクワクしてきたぜ!

 道路は封鎖されているみたいだな。向こうを見渡しても車一台走ってない。貸切だ。あとはいけるとこまで行くさ。

 再び少女の首に左腕を回し、強く締め付けた。
「ヘンなこと考えんなよ、おい」
 一言だけ声を掛けたが、少女から反応は無かった。まぁいい。さぞ怖いだろうによ。そのくらい勘弁してやるよ。

「キキュァー!」

 車を急発進させ、蛇行を繰り返しながら加速する。あばよボンクラども!
 
 アクセルを床まで踏み込むと周りの景色は徐々に流れ始めていった。
 歩道橋や交差点は警察のヤローばかりか。ヘリまで来やがった。奴らが手ぇ出せねぇってのは気味がいいね。そのままずーっと立ってやがれボンクラども。

 俺が物見にふけっていたその一瞬のあと、いきなりフロントガラスが真っ赤に染まった。

「うおおーっ! 前が見えねぇ」
 慌てて急ハンドルを切っちまった。やべぇ!

「ガガガッ」

 何かに激突し、車が止まっちまった。くそっ、頭をやっちまった。痛てぇ。
 車はシューシューと白煙をあげている。もうダメだな。走って逃げるしかねえ。
 
「早く降りろ。行くぞ! おい、大丈夫か?」と少女に声をかけた。

 そこには少女が虫の息でうなだれていた。事故とは関係なく・・・・・・。

 こいつ、俺のナイフで首を切りやがった!

 途切れ途切れに少女がつぶやく。
「これで・・・・・・あんたは」
「あぁ! 何だ。何だよ!」血まみれの顔に耳を近づける。
「2人殺したことになるのよ」
 
 ……考えたな。小さいくせにやってくれたぜ。

「死刑になるのよ。お母さんの仇……」
 
 ンクククッ、ハハハァーッツ!

 遠くからサイレンのこだまが聞こえてきた。

 終わり
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